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3-26 罠 2

last update Last Updated: 2025-12-05 19:24:28

一方その頃。

司が報道部に姿を現した。

名目はスポンサー企業の代表として、報道部が進めている新しい企画の進確認に来た……と言うのは建前で、本当の目的は沙月だった。

(そうだ、俺がここへ来たのは沙月が心配だからじゃない。スポンサーとして企画の進捗を確認するためだ)

自分に無理に言い聞かせるも、沙月の様子が気になって仕方なかったのだ。

昨夜アルコールで酔ってしまった沙月……。嘔吐してしまったにも関わらず、マンションを出しまった罪悪感。

そして自分が作ったスープを飲んだのか確かめたい気持ち……それらの感情が司の中で渦巻いていた。

「司!」

するとどこから聞きつけてきたのか、澪が笑顔で駆け寄って来た。

「チッ」

口の中で小さく舌打ちし、司の顔が歪む。

「来てくれたのね? 電話してくれれば良かったのに」

澪は笑顔で話しかけてくる。

周囲でこの様子を見つめている局員も「婚約者に会いに来た」と勘違いしている。

司は澪や周囲の笑顔に不快感を覚え、視線を周囲に走らせた。

だが、どこを見渡しても沙月の姿が無い。

(妙だな……まさか体調不良で休んだのか?)

「ねぇ、どうしたの? 司」

無反応な司にじれた様子で話しかける澪。

司は、じろりと澪を見つめ……。

「澪、ちょっと来い」

腕を引き、人気のない踊り場へ連れていくと問い詰めた。

「沙月はどこだ? 今日は出勤しているのか?」

沙月という名前を聞き、途端に澪の顔が険しくなる。

「何よ、怖い顔して……知らないわよ、あんな女のことなんか」

「本当に知らないのか!?」

「知らないって言ってるでしょう! 大体何故、あんな女のこと聞いてくるのよ! 私に会いに来たんじゃなかったの!?」

その時。

トゥルルルル……

司のスマホが鳴り響いた。

「チッ……何だ? こんな時に……え!?」

画面を見た瞬間、司の目が見開かれる。着信相手は沙月からだったのだ。

「沙月か!?」

司はスマホをタップすると、今まで一度も出たことが無かった沙月の電話に応じた。

すると、弱々しい声が聞こえてくる。

『助けて……』

その声は震え、今にも消え入りそうだった。

「助けてだって……? 沙月!? 今、どこにいるんだ!?」

『地下にある……機材室……閉じ込められたの……』

「機材室だな!? 分かった! 今行く!」

電話を切って顔を上げると、澪が青ざめた顔で両手を広げて立ちふさがっていた
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  • 冷酷御曹司は逃げた妻を愛してやまない   5-4  容疑者 1

     司が黙って頷いた瞬間、会議室の空気がさらに重くなる。話を聞いていた沙月は息苦しと供に、胸の奥にひとつの疑念が浮かび上がる。「……ねえ、司。どうしてあなたは、デスクが亡くなったことを知っているの?」尋ねる声が震えていた。総務課が報道部に知らせたのは、ほんの数分前。部外者であるはずの司が、なぜそれを先に知っていたのか。だが司は答えない。その沈黙が、沙月の不安をさらに煽る。「総務課の人が言ってたわ……デスクは後頭部を強打して亡くなっていたって……」沙月は唇を噛み、司を見つめた。「ま、まさかとは思うけど……司、あなたが……? 井上デスクを……?」その瞬間、司の表情が険しくなる。「馬鹿なことを言うな! 俺を疑っているのか!」怒りとショックが混じった声が、狭い会議室に響く。だが沙月も引けなかった。「だ、だって……昨日デスクを会議室に連れて行ったでしょう? 二人で戻ってきた時、デスク……物凄く青ざめてた……」司は深く息を吐き、低く言い返す。「……あれは、二度と沙月に手を出すなと警告しただけだ」「え……?」沙月は一瞬、言葉を失った。「そ、そうだったの……? あ……ありがとう……」だが、疑問はまだ消えない。「でも……だったら、どうして司がデスクの死を知ってるのよ?」司はしばらく黙り、やがて口を開いた。「忘れたのか? 天野グループはこの局の大株主だ。重大な事態が起きれば、真っ先に情報が入る」「そ、そうだったの……。それで……デスクが亡くなったことを知ったのね」人の死が関わっているのに、不謹慎だとは思った。だが、司が関わっていないと分かった瞬間、沙月は心底ホッとした。「それじゃ……何故ここへ来たの?」問いかけると、司はわずかに眉を寄せた。「さっきも言っただろう。お前のことが心配だったからだと」「つ、司……」その言葉に、沙月の心臓が跳ねる。だが……その直後、司は恐ろしい事実を口にした。「……あの男が、お前を性接待の餌食にしようとしていた相手。黒川だが……裏社会と繋がっていると言われている。その界隈では有名な話だ」「……え?」沙月は耳を疑い、司は続けた。「黒川は今まで、自分の権力を使って様々な企業から【特別な接待】を受けてきた。そして……その半数は性接待だと言われている」「……そんな……」沙月の呼吸が荒くなる。

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  • 冷酷御曹司は逃げた妻を愛してやまない   4-27 近い距離

    ――18時。定時を告げるチャイムが鳴り、沙月の退社時間になった。結局、デスクは午後から一度も席に戻らなかった。報道部の空気はどこか落ち着かず、局員たちも「どうしたんだろう」と顔を見合わせている。渡された仕事はすでに終わっている。だが、肝心の本人がいないのでは手渡しもできない。仕方なく、沙月は完成したデータをデスク宛てにメールで送信し、帰り支度を始めた。――そのとき、受信フォルダに見慣れた名前が光った。「……司?」開いてみると、短いメッセージが一つ。『今日は用事が出来て、送ることが出来ない。悪いが一人で帰ってくれ』「何よ。子供じゃあるまいし、一人で帰れるわよ……」口ではそう呟きながら、胸の奥がわずかに沈む。本当は、ほんの少しだけ残念だった。(……一緒に帰れれば、デスクと何を話したのか聞けたのに……)そう思った瞬間、ハッとして頬が熱くなる。(ち、違う! これじゃまるで、司と一緒に帰りたいみたいじゃない! 冗談じゃないわ!)自分に言い聞かせるように頭を振る。沙月は手早く荷物をまとめると小声で「お疲れさまでした」と小さく挨拶して報道部を後にした。**** エレベーターホールに向かおうとしたそのとき、局の入口から見覚えのある人物が戻ってきた。「天野さん、またお会いしましたね」「霧島さん……? また局に何か用でも?」「いえ、忘れ物をしてしまって。取りに戻ったんです。そうだ、良ければ一緒に帰りませんか? 部屋も隣同士ですし、今日は車で来ているんですよ」「えっ……でも、また何か噂されたら……」「大丈夫ですよ。僕たちが隣同士だってことは、もう皆に話しましたし。車もすぐ脇のパーキングです。そこで待っていてくれれば、誰にも気づかれません」霧島は穏やかに微笑む。沙月は少しだけ迷った。(……そうね。霧島さんにも、デスクのことを聞きたいし)「では……ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」「もちろんです。では、駐車場で待っていてください。すぐに行きますから」霧島は軽く会釈して局内へ戻っていった。沙月は外へ出て、夜風の中をパーキングへ向かう。「駐車場……ここなのかな?」駐車場の入り口で佇んでいると、小走りの足音が近づいてきた。「お待たせしました、天野さん!」「いえ、そんなに待ってませんよ」「良かった。僕の車はあちらの白

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